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北本自然観察公園 自然観察記録 2004年3月

2004年5月4日更新
                                           埼玉県自然学習センター


【2004年3月31日(水)】
○春の訪れとともに公園に棲みついている野鳥たちに恋の季節が訪れています。いち早く2月にはペアーを組んだモズを始め、3月末の今ではシジュウカラ、エナガ、ホオジロ、カワラヒワ、カワセミ、コゲラ、キジ、キジバト、スズメ、それにカラスも公園の中で繁殖しているのが確認されています。まもなく野鳥たちの子育ての季節を迎えますので、これらの野鳥の巣を見つけても巣に近づかないように、また、野鳥を脅かさないようにお願いします。
○昨日の雨と風で、今季、長い間楽しませてくれたエドヒガンの花も散ってしまいました。また来年も多くの花を咲かせてくれるでしょう。

【2004年3月30日(火)】
○満開の状態が長く続いたエドヒガンの花も散り始めましたが、公園の中は春の草花が群落をつくって咲いています。コバルトブルーに彩るオオイヌノフグリの花の群落や、ピンクがかった赤紫色の群落はヒメオドリコソウ、濃い紫色の花の群落を作るのはキランソウ、淡紫色の群落はカキドオシかムラサキサギゴケ、明るい紅紫色はホトケノザ、木道脇で白く咲くのはタネツケバナ、ショカツサイも紫色の花を立ち上げて小さな群落をつくっています。タチツボスミレなどのスミレ類やタンポポも公園に彩りを添えています。

【2004年3月28日(日)】
○公園のエドヒガンは咲き出しは15日と早かったのですが、咲いた後寒さが続いたので花持ちが長く、花びらもほとんど散ることなく満開が続いています。桜堤のソメイヨシノは5〜6分咲きぐらい、公園に隣接している石戸の蒲ザクラは昨日(27日)開花しました。花は毎年同じように咲きますが、人の世は無常でそうは行かないということで、古来より宗之問の「年々歳々花あひ似たり、歳々年々人同じからず」の漢詩が、人々に好んで口ずさまれています。

【2004年3月27日(土)】
○中国古代の三国志の英雄、諸葛孔明に由来するショカッサイが、公園のあちらこちらで紫色の4弁の花を咲かせています。中国原産の帰化植物で、諸葛孔明が陣中で不足していた野菜を成長の早いこの野菜で補ったので、ショカッサイ(諸葛菜)の名が付いたといわれています。日本では江戸時代から野菜として栽培され、近年、首都圏近辺で野生化が著しい植物ですが、ショカツサイの明るい紫色の花が、春の到来を告げる花として親しまれています。この花は、ハナダイコン、オオアラセイトウ、ムラサキハナナの別名もあります。

【2004年3月26日(金)】
○回りをピンクに染めて満開に咲いているエドヒガンの上のほうの枝に、メジロやシジュウカラが花の蜜を吸いにやってきています。花びらが五枚付いたままのサクラの花がときどき落ちていますが、蜜を吸う時にメジロなどが落とした花です。メジロは一年を通して公園で見られますが、春先には群れとなって甘い声を鳴き交わしながら雑木林の中を移動しているのがしばしば目撃されます。また、色の世界でやや茶の混じった明るい緑色を「うぐいす色」といいますが、これはメジロの羽色で、ウグイスとメジロを混同した結果生れた誤りだといわれています。

【2004年3月25日(木)】
○公園の日当たりのよい草原や園路沿いの斜面でスミレが咲き出しています。すみれ色に咲いているのはコスミレにタチツボスミレ、ノジスミレ、白い色はケマルバスミレです。特にコスミレが大きな花を付けています。スミレは日本に56余種あるといわれ、葉の形や花の色などの違いはあるものの、花の基本的な構成は変わらないので、スミレの種類はわからなくても、誰でも花を見ればスミレの花ということはわかります。「春の野に菫摘みにと来しわれぞ野をなつかしみ一夜寝にける 山部赤人」

【2004年3月24日(水)】
○公園でオスのキジの「ケン、ケーン」と大きな鋭い鳴き声が聞かれるようになりました。この声はキジが繁殖期に入り、俗に「妻恋」と呼ばれる鳴き声で、仲間のオスに対する縄張り宣言とメスに対する呼びかけを兼ねたものです。キジは桃太郎の昔から正義の味方として親しまれ、日本を代表する美しい鳥として国鳥に指定されています。国鳥は世界ではアメリカのハクトウワシなど十数カ国で指定されていますが、それらの国の国鳥は手厚い保護を受けているのに対し、日本の国鳥のキジは保護どころか狩猟鳥として狩猟期には人々の胃の中に入ります。

【2004年3月23日(火)】
○人々に春を告げる代表的な植物のツクシが、日当たりのよい湿地のあぜ道や園路端で頭をもたげて胞子を飛ばしています。ツクシは薄茶色の茎の先に胞子を入れた袋(胞子のう)がたくさん集まった、筆の先のようなもの(胞子のう穂)を付けているスギナの胞子茎で、ツクシは子孫を残すための胞子を作り、一方、スギナは太陽の光を利用して光合成により栄養分を作ります。スギナが出てきたときに土を掘ると、ツクシとスギナがつながっている地下茎から出ているので、同一の植物であることがわかります。

【2004年3月21日(日)】
○今年の公園のエドヒガンは雨が少なかったせいか、花が例年より小さく感じましたが、ほぼ満開を迎えています。3月15日の月曜日に2輪ほど咲き出し、気温が25度近くなった17日に一気に花が開きました。気象庁では花芽の約80%以上が開花した状態を満開と言っていますが、サクラの花の美しい盛りは短く、「三日見ぬ間の桜かな」のたとえ通り、じきに散り始めます。花は咲いているときが美しく、散るようになると誰も見向きもしませんが、サクラの花だけは例外で花吹雪となって散るときも人々の心を引き付け、感動させます。「春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわくなりけり 西行」

【2004年3月20日(土)】
○エドヒガンに続いてコブシも白い花を天に向けて咲かせています。湿地、草原、園路脇などではセイヨウタンポポ、ヘビイチゴ、オオイヌノフグリ、タネツケバナ、ナズナ、ハルジオン、ヒメカンスゲ、トウダイグサ、ムラサキサギゴケ、カキドオシ、ホトケノザ、ショカッサイ、ヒメオドリコソウ、タチツボスミレ、コスミレなどが、雑木林の中ではシュンラン、ウグイスカグラなどが咲いていますが、9時過ぎに降り出した雨も12時頃には春のなごりの牡丹雪となり、ピンクに咲いたエドヒガンの花の上に真白い雪が積もり、公園の中は花冷えの一日となりました。

【2004年3月19日(金)】
○ホオジロは公園の中で一年中見られる鳥です。気の早いホオジロが湿地脇の木の枝に止まってさえずっていましたが、4月に入ると公園のあちらこちらからホオジロのざえずりが聞こえてきます。林のへりや明るい空き地などを好み、見晴らしのよい木などに止まってさえずり縄張りを宣言していますが、ホオジロのさえずりは人語に直しやすいといわれ、「一筆啓上仕り候」や「源平つつじ白つつじ」などと一般に聞きなされています。ホオジロのオスは怠け者で、巣を作るのも卵を抱くのもすべてメスの仕事で、オスはその間巣の近くの木の枝に止まってさえずっているだけです。

【2004年3月18日(木)】
○公園の雑木林の木洩れ日の中やセンター前庭のクスノキの下で、シュンランが花を咲かせています。花は淡黄緑色で、真ん中にある唇弁は白く紫色の斑点が沢山あります。花そのものが透き通るように美しい清楚な印象を与え、さすがは蘭と呼ばれるのにふさわしい気品に満ちた可憐な花です。暗緑色で細長くて硬い葉を繁らせ、菌根とよばれる太い根は地下に伸びて、この根の中に細い糸のような菌糸が沢山あり、この菌糸により地中の栄養分を吸収しています。山野草として人気があり、この公園でも盗掘により絶滅が心配されている植物の一つです。

【2004年3月17日(水)】
○気温が25度近くにあがった暖かな午後の日差し受けて、冬眠から覚めたナナホシテントウやナミテントウが、梅林の下草のオオイヌノフグリの花の群落の上を飛んでいたり、花に止まっていたりしていました。テントウムシは成虫で越冬しますが、ナナホシテントウはあちらこちらの枯れ草の根元や石の下などに、一匹あるいは数匹ぐらいで冬を過ごし、冬でも気温が上がり暖かくなった日には動き出して暖かい冬の陽を受けます。一方ナミテントウは何百、何千という数が毎年決まった場所に集まって浅く地中に潜り冬を越し、春が来るまで暖かい日があっても目を覚ますことはなく眠り続けるといわれています。

【2004年3月16日(火)】
○公園のエドヒガンがやっと咲き出しました。まだ、中ごろの枝に数輪だけですが花が開いているのが確認できます。サクラの開花情報ではかなり早く咲くことが予想されていましたので、一昨年と同じように12日ごろ開花を予想していましたが、見事に外れました。
次の20日、21日の土日に満開になるかわかりませんが、その次の土日では花見は遅く散りだしていると思います。エドヒガンは日本だけでなく済州島や台湾にも分布していますが、徳川家康が江戸を造営したときに多く植えられ、江戸(東京)に多いサクラで、春の彼岸ごろ咲き出すのでエドヒガンと名付けられたといわれています。寿命の長いサクラで岐阜県根尾谷の淡墨桜を始め、今に残る天然記念物のサクラの巨木はエドヒガンが大部分を占めています。

【2004年3月14日(日)】
○風は冷たいが公園の中の陽の光は、すっかり春の日差しになりました。梅園の白いウメの花も盛りを過ぎ、水溜りにはメダカやニホンアカガエルのオタマジャクシが泳ぎ回っています。草原や園路端などにはコバルトブルーの小さな花のオオイヌノフグリ、紅紫色のホトケノザやヒメオドリコソウ、白い小さな花のタナツケバナやナズナも咲き出し、湿原のタチヤナギや雑木林の木々も芽を吹いています。冬眠から目覚めたキチョウやキタテハ、ナナホシテントウも咲き出した花の上やカナムグラなどの枯草の上を飛んでいます。春の足取りは確実に公園の中にも来ています。

【2004年3月13日(土)】
○公園の雑木林沿いの園路脇で、冬でもつやのある緑の硬い葉を付けている常緑多年草のヒメカンスゲが、花茎を立ててその先端に1本のボサボサ頭の薄い黄褐色の雄小穂と、その下に数本の雌小穂を付けて咲いています。ヒメカンスゲはカヤツリグサ科の植物で、公園にこの科の植物は21種類確認されていますが、林床などにはえて同じような形で目立たないので、この科の植物を同定するのは難しいです。「くさかげの なもなきはなに なをいひし はじめのひとの こころをぞおもふ 伊東静雄」

【2004年3月12日(金)】
○一羽のカワウが高尾の池の杭に羽を左右に大きく広げていました。カワウは黒褐色の大型の水鳥で、顔は黄色と白色の模様で長い首にカギ形に曲がったクチバシ、それに背中に茶色の光沢があります。足は太く指は4本とも水掻きによって連なり、水に潜っている間は羽は使わずに水掻きのある足を使って泳ぎ回り、捕まえた魚はカギ形に曲がったクチバシでしっかりとつかみ取ります。カワウは樹上に集団で営巣しますが、県内でもカワウによる川魚の被害が拡大しているということで、有害鳥獣としての捕獲調査が今年から実施されています。

【2004年3月11日(木)】
○センター恒例の野生生物写真展を3月11日(木)から4月4日(日)まで開催しています。この写真展は野生生物の写真撮影を通じて、自然とのふれあいを楽しみながら、自然環境保全の大切さをはぐくんでいただければとの思いから開催しています。今回は47人の方から47点の力作が寄せられましたので展示しています。この場を借りて作品をお寄せくださいました皆様にお礼を申し上げますとともに、野生生物写真展を鑑賞するため皆々様の御来館を心からお待ち申し上げています。

【2004年3月10日(水)】
○朝、ウグイスのホーホケキョと鳴く声が聞こえてきました。うまく鳴くウグイスは調子を高めながら三段に鳴くといわれていますが、まだ、鳴き始めのぎこちない鳴き声ですが、ウグイスの鳴き声を聞くと本当に春が来たと実感させられます。日本人にとってウグイスは特別な鳥で、地鳴きをウグイスだけは「笹鳴(ささなき)」といったり、その年に初めて聞いたさえずりを「初音」といったりするなど、日本人のウグイスびいきが感じとられます。「鶯の次の声待つ吉祥天 加藤知世子」

【2004年3月9日(火)】
○エドヒガンの前の草原で冬越しのロゼット葉の脇から、欧州原産の帰化植物のセイヨウタンポポが、地面にくっくようにして黄色い花を二輪だけ咲かせていました。タンポポの茎は早春は短く地面すれすれで花を付けますが、春が深まるにつれて長く伸びてきます。外来のタンポポが繁殖する理由は、花が年中開花して種子を作っていること、単為生殖であること、頭花数が多いことなどが考えられます。

【2004年3月7日(日)】
○日当たりのよい園路端や草原でヨーロッパ原産のヒメオドリコソウが咲き出しています。まだ、咲き始めなので茎の丈も低く唇形の赤紫色の花もまばらで、葉も上のほうがわずかに赤紫色になっている程度ですが、春たけなわの4月の中ごろになりますと、茎の高さも20p〜30pぐらいになり、葉の色を始め全体が赤紫色になって、一見、ほこりをかぶったような状態になります。このヒメオドリコソウはたくましい生命力により、日本中に分布域を広げている野草の一つです。

【2004年3月6日(土)】
○公園の雑木林で下腹の鮮やかな赤色が目立つ二羽のアカゲラが、キョッ、キョッ、キョッと鳴きながら2m〜3mぐらい離れている電柱ぐらいの大きさの木を、行ったり来たりしていました。キツツキは木に穴をあけますがキツツキが穴をあける木は、虫がいそうな弱っている木で、丈夫で樹脂をたくさん出して虫の侵入を防いでいるような元気な木には、穴を掘ることは無いといわれています。また、この公園ではアオゲラも繁殖は確認されていませんが、番(つがい)で観察されています。

【2004年3月5日(金)】
○今日は二十四節季の一つの啓蟄で、冬眠していた虫が這い出す頃です。公園には昆虫類が14目175科759種、クモ類が22科139種棲息していることが、平成14年度の自然環境調査により確認されています。ところで私たち日本人は、この昆虫などの虫とは違った別の意味で「虫」という言葉を使うときがあります。「虫の知らせ」などという言い方です。あたかも昆虫などの虫が私たちに情報を伝えてくれるかのようないい方をします。また、嫌いな人に対し「あいつは虫が好かん」とも云い、更にもっといやな奴には「虫酸がはしる」とも云います。この世にはわからないことが沢山ありますが、日本人はこの様なわからないことを「虫」のせいにしてしまったのです。人が意識できる能力範囲を超える世界があることを敏感に悟った私たちの先祖は 、それらのことに「虫」という呼び名を与え、尊重したものと考えられます。

【2004年3月4日(木)】
○気象庁から第一回目のサクラの開花予想が発表になりました。花の開花は平年よりもかなり早く、熊谷地方で平年よりも7日早い3月24日を予想しています。このサクラの開花予想はソメイヨシノの開花予想ですので、公園のエドヒガンはソメイヨシノよりも数日早く咲きますから、今年は春のお彼岸の前に咲き出すことが予想されます。ちなみに去年の公園のエドヒガンの開花は3月25日でしたが、冬が暖かだった一昨年は3月12日に開花して18日には満開を迎えています。

【2004年3月3日(水)】
○公園の中は冷たい北風が吹いていますが、今日は3月3日「上巳(じょうし)の節句」、一般にいわれている「桃の節句」です。流れの水にわが身の厄を流す中国の風習と、人形(ひとがた)をわが身に代えて川に流す日本の風習が混ざり合って、日本の節句になりましたが、平安時代の王朝貴族の間では3月3日は中国に倣って優雅な曲水の宴が催されていました。しかし、現在行われているような雛人形を飾り女の子の雛祭りになったのは、江戸時代以降だといわれています。
○2月に公園で写したトラツグミとキレンジャク、ウソの写真をこの公園をよく訪れる野鳥の愛好家の方に寄贈していただきましたので館内で展示しています。

【2004年3月2日(火)】
○今年の2月は記録的な暖かさが続きましたが、3月の声を聞いたとたん2月の暖かさはどこかへすっ飛んでしまい、公園に霜が下りて園路や枯れ草の上が白くなっていました。また、北里の森沿いの土が露出した一部の園路脇で霜柱が出来ています。霜柱は地中の水分が地面や地中で凍結して氷の柱状が出来る現象で、関東地方の赤土に出来やすく、砂地や粘土質では出来にくいといわれています。この朝の高尾の池にはマガモが22羽、コガモが48羽確認できました。

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