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北本自然観察公園 自然観察記録 2004年2月

2004年4月12日更新
                                           埼玉県自然学習センター


【2004年2月28日(土)】
○公園の中の数箇所の梅林で白い花が満開を迎え、心地よいウメの香りを園内にただよわせています。今年の熊谷地方のウメの開花は2月9日で平年よりも6日早いと報道されていますので、公園のエドヒガンの花も春のお彼岸の前に咲き出すかも知れません。ところですし屋やウナギ屋などで価格のランクとして松、竹、梅が使われ、松が高価で竹が中、梅が並という順序になっていますが、これは日本の伝統文化を踏まえた生命力等の観点から順番が付けられたといわれています。松は祭りの木、神の宿る木で長寿の象徴。竹は成長が早く繁栄の象徴。梅は風流の花で華やかだが花の命は短く短命の象徴ということで、梅が一番安い価格として設定されています。

【2004年2月26日(木)】
○憂鬱なスギ花粉の飛ぶ季節になりました。スギの花粉は風媒花の中でもとくに小さくて軽く、風に乗って遠くまで飛ばされます。公園の中で樹冠が円錐形で直立して伸びて、この時季、針のような形の葉がサビ色に変色しているのがスギで、花粉の季節の到来を告げています。スギは常緑樹ですが冬は他の季節とは違って葉がサビ色になります。スギは屋敷や神社、寺、そして近くの山だけでなく山奥まで植えられて、スギが見えないところは無いといわれているほど日本の風景に馴染んでおり、奈良県の吉野杉、秋田県の秋田杉、屋久島の屋久杉などがとくに有名です。

【2004年2月24日(火)】
○ウソが一羽、公園の梅林付近の雑木林で見られました。スズメよりやや大きいぼってりと太った姿で、頭は黒く体全体が青みがかった灰色で、頬から喉にかけて鮮やかなうす紅色をしていたので、オスのウソです。江戸時代の寺島良安が著した「和漢三才図会」にはオスを「照りウソ」、メスを「雨ウソ」と呼び、オスが姿を見せると晴れるが、メスが出ると雨になると記載していますが、今日はオスがあらわれたのでさわやかな晴天です。ウソは通常木の実や花の芽を食べますが、春には人々が楽しみにしていたサクラの花芽を食べてしまい、花見を台無しにしてしまったと報道されることがあります。

【2004年2月21日(土)】
○今日の里山ボランティアでは、4年ほど前に雑木林の伐採をした場所の「萌芽整理」をしました。切り株からたくさん出てきた萌芽の数を減らし、元の雑木林の姿に早くもどすための作業です。雑木林は、20年くらいのサイクルで伐採・萌芽を繰り返してきた林ですが、1960年代くらいからそのサイクルが崩れてきてしまいました。雑木林そのものが少なくなっているのも確かですが、伐採のサイクルを維持している雑木林はさらに少なくなっています。伐採によって地面が明るくなり、それを心待ちにしている植物や動物もいるわけです。

【2004年2月19日(木)】
○ここ何日か、公園内でキレンジャクが1羽観察されています。普通は群れで行動するのですが、今回は1羽だけです。キレンジャクの「キ」は、尾羽の先端が黄色いという色から付いた名前です。英名は Bohemian Waxwing といい、Bohemian は放浪するといった意味で、北半球の中緯度地域に広く分布するキレンジャクが、年によって現れる場所が違うという神出鬼没のその生態から付いた名前です。Waxwingはレンジャクの仲間を表す言葉で、風切羽の先端に赤色のロウ状の物質が付いているために名付けられました。

【2004年2月17日(火)】
○15日朝、やっとアカガエルの卵が見つかりました。昨年は2月7日、一昨年は2月5日だったので、ずいぶんと遅れました。雨が少なく、冬眠から目覚める「きっかけ」がなかったためだと思います。2月8日の「いきもの講座」には間に合うと思ってアカガエルをテーマとして取り上げたのですが予想がはずれました。生き物の季節の進みを予測するのはやはり難しいようです。来月14日のいきもの講座のテーマは「メダカ」です。

【2004年2月15日(日)】
○公園のヨシを刈り取った湿地の一部で、油が浮いたように赤褐色になっているところがあります。これは刈り取ったヨシが枯れて、有機質が分解する過程で冬の気温が低かったので不完全分解をおこし、鉄分が流れ出したもので、表面に浮いた油のようなものは酸化鉄の皮膜です。公園には栄養分の富んだ家庭の雑排水も流れ込んでいるので、ヨシなどの生育には適した場所といえます。

【2004年2月13日(金)】
○公園の冬枯れの雑木林の中で葉の緑が一段と濃くなっている樹木がアオキです。アオキの葉は厚く光沢があり、枝も濃い緑色をして一年中緑色の樹木というのでアオキと名付けられたといわれています。種田山頭火の「分け入っても 分け入っても 青い山」の句のように、以前は緑色のことを青色としばしばいっていました。また、通常この時期のアオキには楕円形の赤い実が成りますが、公園にはアオキミタマバエが多いと見えて、赤く実が熟すのは一部のアオキで、緑のままでいびつな形のアオキの実が多いようです。

【2004年2月10日(火)】
○オオイヌノフグリに続いてホトケノザも公園の日当たりの良い梅林の下で、紅紫色の花を咲かせています。段々状に茎を抱くように付いている葉の脇から花は7個ぐらい出来ていますが、立ち上がって咲いているのはひとつか二つぐらいで、紅紫色の色を見せているだけで咲かない小さな花(閉鎖花)があります。春の七草のホトケノザは今いわれているホトケノザではなく、コオニタビラコの事だといわれています。群落をつくり早春の野をピンクに彩るのは、ホトケノザかヒメオドリコソウの花たちです。「佛の座石をめぐりてはな咲けり唇形ひらくさまも羞(やさ)しく 生方たつゑ」

【2004年2月7日(土)】
○ミニ展示が新しくなりました。今回のテーマは「鳥の巣」です。「巣」はその鳥によって作る場所はもちろん、使う材料や作り方も違うことはご存じでしょうか?この公園ではいろいろな鳥が観察できますが、なかなか「巣」まで見ることは出来ません。今回は様々な鳥の巣を展示しました。精巧な作りを見るとともに、ぜひ実際に巣作りを体験しにきてください。

【2004年2月5日(木)】
○1月の初めには、組紐のように規則正しく硬い暗褐色のホウが並んで北風に耐えていたハンノキの雄花が、ホウとホウの間に隙間が出来て、色が暗褐色から黄褐色に変わり、長さもシッポのように5p以上に伸びて花粉を飛ばしています。ハンノキは葉が開く二ヶ月以上も前に花粉を飛ばしますが、葉が開くとせっかく風に乗った花粉が葉に付いたり、花粉を運ぶ風を弱めたりするので、ハンノキのような風媒花の樹木は葉が開く前に花を咲かせる種類が多いようです。なお、ハンノキはホオノキと共に古赤道に沿って分布していることから、地球上で最も古く出現した(六千万年前〜三千万年前)植物であると言われています。「ハンノキのそれでも花のつもりかな 一茶」

【2004年2月3日(火)】
○公園の駐車場の男子トイレの壁に1.5cmぐらいの大きさの、ウスバフユシャクの成虫が張り付いていました。ウスバフユシャクのフユシャクとは冬に出るシャクガということで、日本には20数種が知られています。昆虫は変温動物で、通常寒い冬は避けて発生しますが、冬はトンボなどの外敵がいないので、そこの隙間を狙って発生するのがフユシャクといえます。また、フユシャクの雌には翅が退化してありません。翅には飛ぶ機能と体温調整機能があるといわれ、フユシャクの雌は天敵から逃げる必要が無いのと、寒い冬を乗り切って子孫を残すため、飛ぶ機能と体温放出機能の高い翅を自ら無くし、今の姿になったものといわれています。

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