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北本自然観察公園 自然観察記録 2002年8月

2002年9月30日更新
                                           埼玉県自然学習センター



【2002年8月31日(土)】
○昔は衣食住に関わる重要な植物として人々に愛されていましたが、今ではその強い繁殖力により厄介者にされ人々から嫌われている植物のクズが、ふれあい橋からセンターへの園路沿いで、他の植物に巻き付きながら花を咲かせています。秋は咲く花が多く、その中でも昔の人は秋の七草といって、沢山の草花の中から七つの草花を絞り込んで親しんできましたが、クズの花も秋の七草の1つです。また、秋風が吹くようになるとクズの葉が風に揺れてひるがえり、葉裏が見え、秋の野の物寂しい風景を演出しますが、この葉裏を「裏見」すなわち「恨み」の意味に取り「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」の歌と、これに関わる「信太の森の葛の葉狐」の伝説が生まれました。

【2002年8月30日(金)】
○夜行性のゴイサギが昼間から高尾の池に出て、ゆっくりと移動しながら小魚をねらっていました。ずんぐりした体で頭は黒っぽくクチバシは大きくて鋭い目をしています。夜間に「クワッ クワッ」という一声ずつ区切った声で鳴き、別名「夜鴉(ヤガラス)」ともいわれています。ゴイサギの名前の由来は、醍醐天皇が神泉苑の池にいる鳥を見つけ、家来に命じて捕まえようとしたところ、この鳥は逃げもせずおとなしく捕まったので、勅命に逆らわないで神妙であるということから天皇はこの鳥に五位の位を授け、以後この鳥を「五位鷺」と呼ぶようになったと「平家物語」は伝えています。

【2002年8月29日(木)】
○ヌスビトハギが園路端などで満開を迎えています。高さは1mぐらいで花は淡紅色で数oほどの蝶形花を多数付けています。和名は、花の実の形が抜き足差し足で歩く盗人の足跡に似ているとか、実がよく被服に付くから名付けられたとかいわれています。ハギというと「万葉集」以来鹿を連想しますが、ハギの花が今盛りと咲き誇っている中を、牡鹿が牝鹿を求めて鋭い声で鳴いているという、ありふれた心象風景が思い浮かびます。

【2002年8月28日(水)】                              
○今年は朝夕のヒグラシの蝉時雨(せみしぐれ)が未だに聞かれません。例年ですと8月も下旬になると、北里の森などではアブラゼミやツクツクボウシの鳴き声を圧倒して、ヒグラシの蝉時雨が心地よく聞かれました。センターのイベントの「セミのぬけがら調査」では7月24日は31個、8月23日は51個のヒグラシの抜け殻が見つかっており、7月の中旬以降ヒグラシの鳴き声はよく耳にしますが、蝉時雨までにはなっていません。今朝の公園は台風の影響からか気温は高いのですが、にわか雨が降り雲が低くたれ込めて、北里の森の中は薄暗くヒグラシが鳴くには調度よい明るさと思ったのですが、ツクツクボウシなどは鳴いていましたが、ヒグラシは一匹も鳴いていません。しかも公園ではニイニイゼミがまだ鳴いています。これも近年いわれている異常気象の影響なのでしょうか?

【2002年8月27日(火)】
○細長いヒモのようなミズヒキの花も公園で親しまれている花の一つです。午前中だけ開く四弁の花で、細い花穂を上から見ると赤く見え、下から見ると白く見えることから、お祝いに使う紅白の水引にたとえて名付けられたといわれています。浅間高原の花を多くの詩に読んだ、夭折(ようせい)した花の詩人立原道造は、詩集「萱草(わすれぐさ)に寄す」の中のソネット「のちのおもひに」で「水引草に風が立ち」と歌っています。また、公園ではキンミズヒキの花も見頃を迎えています。

【2002年8月25日(日)】
○茎や葉柄に下向きに刺がついており、その刺で園路端や草原の植物に強くからみつき、猛威をふるっているつる草のカナムグラは、公園の嫌われ者です。カナムグラのカナは鉄の意味で、ムグラはぼうぼうと茂る雑草を表します。すなわちカナムグラは鉄のように強い雑草を意味し、ほとんどの植物はカナムグラが茂ると枯れていまいます。一世を風靡した由緒ある屋敷も、カナムグラが生い茂ると急激に荒廃し、ものわびしい風景に変わります。この盛衰を平安時代の人は世の無常と捉え「八重むぐらしげれる宿のさびしさに 人こそ見えね秋は来にけり 恵慶法師」の歌が生れました。なお、この時代の八重むぐらはカナムグラのことだといわれています。

【2002年8月24日(土)】
○葉を揉んで嗅ぐともの凄い異臭がするアカネ科の多年性つる草のヘクソカズラの花が、日当たりのよい園路脇や草原で、他の草花に絡み付いて咲いています。長さ1p径5oぐらいの小さな花で、花冠は白色の漏斗形で先は開いて5裂し、中央の紅色が美しく意外に品のよさを感じさせる花です。アサガオと同じに左巻きで他の物にからみつきます。花の中央がお灸のあとに似ているので別名ヤイトバナとも呼ばれ、「万葉集」にも高宮王(たかみやのおおきみ)の次の1首が詠まれています。「さいかちに延ひおほとれるくそかづら 絶ゆる事無く宮仕せむ」。

【2002年8月23日(金)】
○今日は2回目のセミのぬけがら調査の日です。園内を3コースに分かれてセミのぬけがらを集めた結果、ニイニイゼミが21個、アブラゼミが289個、ミンミンゼミが138個、ヒグラシが51個、ツクツクボウシが55個の全部で554個見つかりました。また、コース別でおもしろい結果が出ています。北里の森コースはアブラゼミとヒグラシ、トンボ池・梅林コースはアブラゼミとツクツクボウシ、エドヒガンコースはアブラゼミとミンミンゼミのぬけがらが多数見つかっており、このことからアブラゼミは公園の全域が、ヒグラシは北里の森が、ミンミンゼミはエドヒガンの谷沿いが、ツクツクボウシは高尾の森周辺で多く発生していると推定されます。

【2002年8月22日(木)】
○真夏の太陽の日が照りつける園路端で、オヒシバががっちりと裸地にはりついて繁茂しています。「雑草のごとく強い」という形容がピッタリの草で、引き抜こうとするとその努力が無駄骨であることを思い知らされます。今では誰も見向きもしない草になってしまいましたが、昔の子供はオヒシバで髪かんざしを作ったり、また、オヒシバの生い茂る小道では、小道の両側のオヒシバを結び合わせて、通る人を転ばせるなどして遊んだものです。

【2002年8月21日(水)】
○台風13号が太平洋上に去って二日目の園内は、アカトンボが群れて飛び交っています。アカトンボと呼ばれているトンボは日本では20種ぐらいいますが、今日飛んでいるのはオレンジ色のウスバキトンボで、南方の島で発生したものが、今回の台風の風に乗って、はるばる海を越えて北本の地までやってきたものと思われます。このトンボは日本列島を北上して行く先々で産卵しますが、南方系のトンボの悲しさ、産卵した卵は孵化するだけで、日本の冬を越すことが出来ず死んでしまいます。成虫も寒さの到来と共に死んでしまいます。そしてまた翌年になると、南の国から片道切符を持ったウスバキトンボが、日本列島に飛んできます。なお、公園のウスバキトンボは1日滞在しただけで、翌日はどこかへ飛んでいってしまいました。

【2002年8月20日(火)】
○公園を代表する花のコバギボウシが、高尾の森や北里の森、園路端の雑木林などで、一斉に淡紫色の花を斜めに下垂れさせて咲き出しました。葉がギボウシの仲間で最も細く小さいのでコバギボウシと呼ばれていますが、水辺や湿地を好むので別名ミズギボウシの名もあります。ギボウシは東アジア特産種で日本には20種ほどが自生しており、日本のギボウシとして海外で評判の高い植物です。また、この公園ではオオバギボウシも花を付けています。

【2002年8月18日(日)】
○エドヒガン寄りの木道脇の日当たりのよい場所で、多年生つる草のカガイモが花を咲かせています。直径1pほどの5弁の星形をした肉厚の花で、色は淡紫色で内面には毛が密生しています。よく伸びた蔓を切るとキリ口から大量の白い乳液が出てくるので別名「乳草」とも呼ばれています。古くはカガミと呼ばれ「古事記」や「日本書紀」によると、カガミ(カガイモ)の船に乗って、少彦名命(すくなびこなのみこと)という小さな神様が、出雲の国の大国主神(おおくにぬしのみこと)のところへやってきたと伝えています。

【2002年8月17日(土)】
○いろいろな野草が生い茂る園路端や草原で、エノコログサが柔らかそうな花の穂を、重たげに垂れていました。平安時代に編まれた「和名抄」には「犬子草(いぬのこぐさ)」となっており、花穂が子犬の尾に似ているので名付けられたといわれています。別名「ネコジャラシ」の名前もあり、犬と猫という人が最も愛がんする動物の名前を持つ親しみのある野草といえます。また、古い志野焼や唐津焼などには、エノコログサなどの野草が群生している秋の野の風景を無造作に描いた、通称「秋草文」といわれる美しい絵皿がたくさん残されています。

【2002年8月16日(金)】
○公園の人気者のトンボには二通りの餌の取り方があります。一つはシオカラトンボ類の餌の取り方ですが、一カ所に待機していて餌のハエやカが近づくと、さっと飛んでいって捕まえ、元の場所に戻ってくるというタイプ。もう一つはギンヤンマ類で、ある一定の場所で「おまわり」というパトロールをして、飛んでくるハエやカを捕まえるというタイプです。またヤゴからの羽化の方法についても、大部分のトンボは殻から出て一度逆立ちする「倒垂型」ですが、イトトンボ類は逆立ちをしないで真っ直ぐにせり出してくる「直立型」です。

【2002年8月15日(木)】
○背中に翅が生えていない半人前のカマキリを、園内の木々の上でよく見かけるようになりました。通常カマキリは7回脱皮して一人前になるといわれ、最後の脱皮が終わると背中に羽が生えてきます。カマキリなどの昆虫の表皮は、一定以上には延びないキチン質からできており、昆虫がさらに成長するためには小さくなった表皮を脱ぎ捨てなければならず、この古い表皮を脱ぐことを脱皮といっています。まもなくカマキリは羽化(最後の脱皮)を終え、翅の生えた一人前のカマキリになります。

【2002年8月14日(水)】
○3本ずつに枝を分けながら輪生を重ねながら、先端に多数の3弁の白い花を付けるヘラオモダカが、木道脇の湿地に咲いています。「枕草子」ではオモダカを「面高」と見て、慢心しているような名前を持つのが幾分滑稽でおかし(63段)といっています。葉の形がヘラのような形をしているので、ヘラオモダカと名付けられたといわれています。

【2002年8月13日(火)】
○雑木林のクヌギの幹の樹液にカブトムシやカナブンが集まっていました。この樹液には公園をすみかとするノコギリクワガタやコクワガタ、スズメバチ、サトキマダラヒカゲ、ルリタテハなども集まりますが今日は見あたりません。幹にできた傷口から染み出した樹液には糖分が含まれており、この樹液に野生の酵母菌が付いてアルコールに変化し、さらに酢酸菌が付いて酢がくわえられ、一種のワインみたいなものに樹液は変化していきます。このワインのような樹液の天然酒場の甘露を求めて、いろいろな虫たちが集まってくるようになります。

【2002年8月11日(日)】
○園路を歩いていると、あちらこちらに小さなドングリを付けたコナラの小枝が落ちています。小枝の切り口を見ると鋭い刃物で切られたように見え、またドングリをよく見ると小さな黒い穴が一つあいています。これはハイイロチョッキリというオトシブミ科の昆虫の仕業で、ドングリの中に卵を産んでからその枝を切り落としたものです。ドングリの中で孵った幼虫は土に入って蛹化・羽化します。和名の「チョッキリ」とは「ちょん切る」という意味です。

【2002年8月10日(土)】
○公園の高尾の池にアオサギが一羽舞い降りて、ゆっくりと池の小魚を探しながら歩いていました。日本最大のサギ科の鳥で、灰色の体で青味がかった黒色の翼は、遠くから見ると灰青色に見えることから、アオサギと名付けられたといわれています。姿格好がツルによく似ているので、ツルとよく間違えられますが、サギにだまされては立つ瀬がありません。二階の観察ロビーから望遠鏡でアオサギをのぞくと、冷たい鋭い目が飛び込んできてぎょっとさせられます。生き物を餌にしている鳥は一般に目が鋭くなります。

【2002年8月9日(金)】
○今日も気温が38度という昼日中にウグイスの鳴き声が、センターの中でもはっきりと聞かれました。江戸時代はウグイスの美しいさえずりに見せられて、多くの人が飼育してその声を楽しみました。野鳥は雛の頃に聞き覚えた音色が記憶されて、それが成鳥になってからのさえずりの基礎になるといわれています。かつては訓練された優れた鳴き声の成鳥のそばに幼鳥を置いて、野生の鳴き声とは違う人工の鳴き声を聞かせ訓練していく「付子(つけこ)」という方法がはやりました。とくにウグイスにはこの方法が効果的だったようです。しかし、今はウグイスなどの野鳥の飼育は法律によって原則禁止されています。

【2002年8月8日(木)】
○今日は二十四節季の一つの立秋です。一年の中で一番暑い時期で今日の熊谷の最高気温は38.2度を記録していますが、この日をはさんで気温はだんだんと下がりはじめるといわれ、立秋以後の暑さを「残暑」と呼んでいます。園内の北里の森の園路沿いで、アキノタムラソウが淡紫色の花を咲かせています。「分け入っても分け入っても青い山 山頭火」といえる公園の緑一色の木々の中で、淡紫色の花の色は以外と目立ちます。和名でアキノと付いていますが夏から咲いている花で、タムラソウという名もアザミによく似た花のタムラソウとの関連はなさそうです。

【2002年8月7日(水)】
○この公園は水辺が多いので各種のトンボがいます。この夏に目撃されたトンボはアジアイトトンボ、ウチワヤンマ、ナゴヤサナエ、オニヤンマ、ネアカヨシヤンマ、マルタンヤンマ、クロスジギンヤンマ、ギンヤンマ、ヤブヤンマ、カトリヤンマ、コヤマトンボ、ショウジョウトンボ、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ウスバキトンボ、コシアキトンボ、ナツアカネ、ノシメトンボ、それにキイトトンボやエゾトンボも目撃されています。

【2002年8月6日(火)】
○この公園には5種類のセミが棲息しています。6月末から7月初めに鳴き出すニイニイゼミ、7月下旬頃出現するアブラゼミとミンミンゼミ、最後に出るのがツクツクボウシ、そしてニイニイゼミと同じ頃に出現しているが、陽が明るすぎて鳴けないでいるヒグラシです。しかし、今年は7月の末にはツクツクボウシを含めてこの公園に棲息するすべてのセミの鳴き声が聞かれました。一般にミンミンゼミは午前中に鳴くことが多く、アブラゼミ、ツクツクボウシは午後に鳴くことが多いといわれていますが、公園のアブラゼミはニイニイゼミ同様昼間の間中鳴いているように感じます。そして朝夕の涼しい日にはヒグラシが鳴きます。また、クマゼミが急速に棲息範囲を北上させているようですが、この公園ではまだ確認されていません。

【2002年8月4日(日)】
○今日は、ある団体が公園の野鳥を見る観察会を行いました。団体の幹事さんに聞いたところ、観察できたのは以下の21種の野鳥だそうです。カイツブリ、カワウ、ゴイサギ、ダイサギ、アオサギ、オオタカ、コジュケイ、キジ、バン、キジバト、カワセミ、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、シジュウカラ、メジロ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。

【2002年8月3日(土)】
○今日のイベントは身近な草花を使っての「楽しい草花あそび」です。道ばたや空き地の雑草オヒシバで作る髪かんざし、モチノキ科のタラヨウの葉裏に字を書くタラヨウのはがき遊び、クズの葉鉄砲やキショウブの草矢、シュロの葉で作るシュロ船やカタツムリ、シロダモの葉を巻いて作る巻笛、シノやイタドリの茎で作る笛を作りました。最後に自分達で作った各種の笛を使って「幸せなら手をたたこう」を参加者一同で合奏して終わりました。

【2002年8月2日(金)】
○1mぐらいの高さで茎の先に白い花を五重塔のように数段輪生させて、ヤブミョウガの花が高尾の森の林内などで咲いています。「大和本草」などに掲載されている古くから知られている薬草で、ヘビにかまれたり、カに刺されたりしたとき、または腰痛などに効果のある民間薬として知られていました。秋になると直径5oほどの藍青色で光沢のある丸い実を付けます。

【2002年8月1日(木)】
○定例自然かんさつ会などで最も利用されているふれあい橋のたもとのクサギが、今年も独特の香りのある白色の花を付けました。5枚の鋭くとがった萼は、緑をまじえた暗赤色を帯びており、また、葉を揉むとその名のように強い悪臭が生じます。この花にはアゲハチョウを始めいろいろな虫たちが花の蜜を求めて集まりますが、今日はクロアゲハやキアゲハ、アカタテハそれにオオスカシバが飛んでいました。一昨日はナガサキアゲハがこの花の蜜を求めているところが目撃されています。なお、ナガサキアゲハの命名者は、幕末にシーボルト事件で国外追放された、オランダ長崎商館のドイツ人医師シーボルトその人です。

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