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北本自然観察公園 自然観察記録 2001年9月

2001年10月26日更新
                                           埼玉県自然学習センター




【2001年9月30日(日)】
○今年はあまり実を結びませでしたが、ふれあい橋のたもとのクサギが、赤いガクに包まれ瑠璃色の玉の実を付けています。「この実で布を染めると、秘色といわれる天青の色に染まる」と染織家の志村ふくみは語っています。天青の色とは雷雨後の抜けるような青空の色のこと。すなわち雨過天晴(青)の色で、青磁の世界ではこの色が理想的な青磁の色と云われています。志村ふくみはこの秘色といわれる天青の色をクサギの実で獲得しました。

【2001年9月29日(土)】
○何名かの来館者に「良いチョウがいるよ。」と言うことで見に行くと、関東地方ではめずらしいムラサキツバメと言うシジミチョウの仲間でした。もともと西日本から南西諸島にかけて分布するチョウですが、風に乗って北本までやってきたようです。

【2001年9月28日(金)】
○お昼頃になるとツクツクボウシやミンミンゼミがか細く鳴きだしますが、すでに主役は秋の虫コオロギなどに交代しています。ゆっくりとしかも確実に季節が動いています。「いつの間に もう秋! 昨日は 夏だつた・・・」という立原道造の詩の一節が実感される今日この頃です。

【2001年9月27日(木)】
○高尾の池のコガモがだいぶ増えてきました。40羽くらいいます。
○まだ少数ですが、マガモもやってきたようです。この時期、まだオス、メスの姿の差がほとんどありません。もう少しするとオスの羽はあざやかになり、メスにプロポーズするようになります。

【2001年9月26日(水)】
○園内でお腹が膨らんだカマキリをよく見かけるようになりました。カマキリの名前の由来は、鎌のような前足で獲物を切ることから名付けられたと云われています。カマキリの呼び名の方言は東条操編「分類方言辞典」によると、130種が数えられており、最も多くの方言の名前を持つ昆虫の一つといえます。

【2001年9月24日(月)】
○夜になると公園は秋の虫の声で賑やかです。地面の方からエンマコオロギやミツカドコオロギ、耳をよく澄ますとツヅレサセコオロギ。また、樹上からは中国から来たといわれているアオマツムシの高音の声、枝の方からクサヒバリやカネタタキ、鳴く虫の女王と言われるカンタンの声も神経を集中させると、か細い声で鳴いているのが聞こえました。

【2001年9月23日(日)】
○公園の林の中にはいろいろなキノコがいっぱいです。ツエタケ、ホコリタケ、ノウタケ、カワリハツ、アマタケ、アラゲキクラゲ、クロハツ、オオゴムタケ、クロラッパタケなどの食用になるキノコ。
○また、ニガクリタケ、ニセクロハツ、キヒダタケ、ヒメカタショウロ、ヒロヒダタケ、オオキヌハダトマヤタケなどの毒キノコが見つかりました。

【2001年9月22日(土)】
○今日は滝沢清先生による「楽しい草花・木の実遊び」の日です。かって日本が貧しかった数十年前の子供の遊びと言えば、草花や昆虫などを捕まえての遊びがほとんどでした。しかし、日本が豊かになった今、草花や虫などの自然を相手にした遊びは忘れ去られてしまいました。滝沢先生の草花遊びは、クズの葉鉄砲やヒガンバナの首飾り、ドングリのこま、色々な葉による草笛など、身近にありすぐ手の届く自然を材料とした遊びです。当センターは草花遊びのような、自然の中で楽しく触れあう行事を、これからも積極的に行っていきたいと思います。

【2001年9月21日(金)】
○センター北側の草むらに、秋の七草のススキが咲きました。オギと共に出そろった穂がいっせいに風になびく姿は、なんともいえない風情を感じます。別名尾花と呼ばれ、武蔵野の「月と尾花」は江戸時代の一般庶民の間にも浸透した景観であり、お月見が年中行事として行われるようになりました。絵画・工芸の世界でススキを中心に秋草の乱れ咲く図は、琳派の最も得意とする画題です。

【2001年9月20日(木)】
○この朝、高尾の池でアシに隠れているゴイサギが21羽確認できました。8羽は成鳥で、残りは幼鳥のようです。夕方、観察ロビーで望遠鏡の焦点を池に出てきたゴイサギの成鳥に合わすと、一種の凄味のある氷のような眼が、酷薄さを感じさせて気味が悪くなります。餌が小魚などの鳥は他の生命を襲う必要から眼線も鋭く、眼の表情も険しくなるのも、やむを得ないのかもしれません。

【2001年9月19日(水)】
○一夜堤への三叉路や高尾の森に、50pぐらいの花茎を伸ばし、その花茎に1pぐらいの明るい紅紫色の花をたくさん付けたフジカンゾウが咲いています。ヌスビトハギによく似たハギの仲間で、果実はヌスビトハギの2倍ぐらいの大きな実を付け、被服などにくっいて種子を広く散布させます。名前の由来は花はフジに、葉はマメ科のカンゾウ(甘草)に似ているので付けられました。

【2001年9月18日(火)】
○北里の森の雑木林の下に、茎頂と葉えきなどにぽつんぽつんと白に紫色の斑点のある独特の花を咲かせているヤマジノホトトギスが咲き出しました。この公園ではヤマホトドギスと共におなじみの秋の花です。花の名前は花の斑紋が鳥のホトトギスの胸の斑紋に似ているので名付けられました。江戸時代に編纂された「立花大全」に「郭公(ホトトギス)」として掲載があるものの、それ以前の古典籍に掲載例が見あたらない不思議な花です。

【2001年9月16日(日)】
○朝、まだあまり人の通っていない園路を歩くと、頻繁にクモの巣が顔にかかるようになりました。今、大きくて目立つのは、ジョロウグモやナガコガネグモです。大きな網を張って、昆虫を捕らえていますが、スズメバチに食べられてしまうこともあります。先日は、コガタスズメバチに肉団子にされるジョロウグモを見かけました。

【2001年9月15日(土)】
○公園は秋の草花が真っ盛りです。ヒガンバナ、ツリフネソウ、ヤマジノホトトギス、ツユクサ、ススキ、アキノタムラソウ、ママコノシリヌグイ、ミゾソバ、アキノウナギツカミ、シラヤマギク、カントウヨメナ、アキノノゲシ、ヤマハギ、ヌスビトハギ、フジカンゾウ、ボンドクタデ、タコノアシ、タチアザミ、ノジアザミ、ヘラオモダカ、コウホネ、ミズヒキ、キンミズヒキなど。あなたは何種類の花を探せますか?

【2001年9月14日(金)】
○あずま屋を一夜堤へしばらく行った園路の下に、多数のナンバンギセルが咲いています。ナンバンギセルは一年生の寄生植物で、よくススキやミョウガなどに寄生しますが、ここではホソバジャノヒゲに寄生しています。しっとりと首を垂れ、物思いに耽っている様から、「思い草」と万葉の時代は呼ばれていました。ナンバンギセルと呼ぶようになったのは、おそらく南蛮交易に憧れた安土桃山から江戸初期にかけて、首を傾げた姿が南蛮渡りのキセルに似ているので、名付けられたものと想像されます。

【2001年9月13日(木)】
○キツリフネに続いてツリフネソウが木道、八つ橋、子供公園への橋の両際などで咲き出しました。花は長さ3pぐらいの紅紫色で、水辺を好み群生していることが多い花です。キツリフネと同じように、熟した果実はわずかな刺激で裂け種子を飛ばします。

【2001年9月12日(水)】
○昨日、小枝や葉っぱ・どんぐりなどを多数落として、野分が駆け抜けていきました。咲きかけたヒガンバナも水に浸かったり、茎がしなったりして、茎の先の真赤な花が地面に垂れかかっているのが多数ありました。園路は一夜堤付近が冠水して通れなくなりましたが、大した被害もなく一安心です。

【2001年9月11日(火)】
○園路のあちらこちらに長い茎の先に真赤な花を重たげに付けたヒガンバナが、妖しい姿で咲き出しました。秋の彼岸の頃田んぼのあぜ道などに群生して咲いていると、ほんとうに秋が来たという気分になります。別名の「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」は梵語で赤い花を表します。毒草であることから人々の関心が強く、方言による花の名が1000以上知られています。

【2001年9月9日(日)】
○キク科のカントウヨメナが咲きはじめました。
○今日は日本ではあまり定着しなかった五節句の最後を飾る、菊の節句すなわち重陽の節句です。キクは天皇家の紋章でもあり、中国から奈良時代の末頃渡来した植物で、平安時代には貴族の間で不老長寿の霊性を表す花、また、陶淵明をはじめ中国のあこがれの詩人が詠んだ花として栽培・珍重され、「源氏物語」においては、ナデシコに次いで2番目に記載の多い植物になりました。

【2001年9月8日(土)】
○高尾の森では、ヤマハギが紅紫色の花を付けています。ふつうのハギのようにしだれないで、真直ぐ立ち上がって風情のない姿をしています。しかし、万葉集の時代には一番愛され、141首もの歌に詠まれたハギは、このヤマハギだと云われています。ハギは古い株から新しい芽を吹く、非常に生命力の強い植物であることから、芽が生える草「生芽」と書いてハギと読ませ、その強い生命力に万葉人は呪術的な力を感じたのかも知れません。

【2001年9月7日(金)】
○早いもので冬の使者コガモが5羽、高尾の池で泳いでいました。今シーズン初見えです。コガモは、夏に北国で繁殖するカモの中ではいちばん遅くまで日本に残り、いちばん早くやってきます。寒がりなのでしょうか?

【2001年9月6日(木)】
○今朝園路を歩いていると、上空からピックィーという声が聞こえてきました。数羽のカラスに追い回されているサシバがいました。もう一ヶ月もすると南の方に集団で渡っていきます。

【2001年9月5日(水)】
○園路を子供公園へ行く橋を渡らずにしばらく蒲桜方面へ行った右側に、花の形が帆かけ船をつり下げたような形に見えるキツリフネが咲いています。黄色い花の毒草ですがホウセンカと同じ仲間で、熟した果実は触れるだけで音を立てて種子をはじき飛ばします。湿り気を好み、花が咲くまで目立ちませんが、開花すると特徴的な花が人目を引きます。

【2001年9月4日(火)】
○公園や園路の湿った場所に、長さ4oぐらいの淡紅色で先端は紅色の花を付けた一年生の草本、ママコノシリヌグイが見られます。茎はつる状で長くのび逆向きの刺があって他の植物をひっかけています。名前の由来は、刺のある茎で継子の尻を拭く草と云う意味かも知れませんが、江戸時代の庶民は言葉のエスプリを楽しむ民族だといわれ、この花の命名もただの言葉遊びだったようです。

【2001年9月2日(日)】
○公園のいたるところに、秋の七草に数えられるクズの赤紫色の花が目立ってきました。
とくにふれあい橋のたもとでは、クズの蔓がアカメガシワに絡まり、覆ってしまっています。クズは生活力旺盛な植物で、荒地や路傍にも好んで生えることから、釈迢空の「葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり」の絶唱が生まれました。

【2001年9月1日(土)】
○今日から、ミニ展示「スズメバチだ!」をはじめました。オオスズメバチやコガタスズメバチ、キイロスズメバチなどの巣や標本を展示しています。巣の材料は何だと思いますか? 顕微鏡をのぞいて、確認してみてください。

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