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北本自然観察公園 自然観察記録 2003年8月

2003年10月17日更新
                                           埼玉県自然学習センター


【2003年8月31日(日)】  
○公園の中でイヌビエ、オヒシバ、メヒシバ、ササクサなどのイネ科の植物も花を付けています。一般にイネ科の植物のように花とはいえない地味な花を咲かせるものや、人によってはこの公園に生えている草花の大部分を雑草といってしまうかも知れませんが、この雑草という言葉について亡くなった昭和天皇は「雑草という言葉はいけないね、草にも一つ一つちゃんとした名前があるのだから」と言われたそうです。この言葉は非常に含蓄のあることばで、指導する立場にある人は常にそのような心構えで居てもらいたいものだと思います。

【2003年8月30日(土)】
○園路のあちらこちらで1mぐらい茎を伸ばし、その枝分かれした先に直径2pぐらいの白い頭花を付けたシラヤマギクが咲いています。山野に生えるノギクの仲間で、花は疎らで花弁の数も6枚前後と少ないのですが、なぜか公園でこの花に出会うと素朴で清楚な美しさを感じさせます。食用にするシラヤマギクの春の若菜はムコナと呼ばれていますが、ヨメナに比べてかたくて余り美味しくないのでそう呼ばれているといわれています。

【2003年8月29日(金)】
○いまだにニイニイゼミの鳴き声が聞こえますが、ツクツクボウシの鳴き声も公園の四方から聞こえてきます。ツクツクボウシは別名ホウシゼミともいわれ、鳴き声が段々と上がっていき、最後に「ジー」と鳴き終わると同時に小便を垂らしながらさっと飛び立つことがよくあります。ツクツクボウシの鳴き声は複雑であり、梶井基次郎の小説「城のある町にて」の中で、このゼミの鳴き方を面白く表現している部分があります。また、せわしなく何かに追い立てられているように鳴くツクツクボウシの鳴き声は、夏休みの終わりに宿題に追い立てられていた子供時代の事を思い出させます。「過ぎてゆく日々のゆくへのさびしさやむかしの夏に鳴く法師蝉 斉藤史」

【2003年8月28日(木)】
○淡紅色の数oの小さな花を穂状に多数付けたヌスビトハギが、園路の縁で咲いています。花はマメ科特有の蝶形をしており、また、葉は卵形で三角形を作るように茎に付いています。秋に実る果実には種が入った部分毎に区切りがあり、一区切りはほぼ半円形で二個連なることが多く、この実の形が盗人の忍び足の跡に似ていることからヌスビトハギと名付けられたといわれていますが、また別の説は、この実が気づかない内に服に付くからだともいわれています。

【2003年8月27日(水)】
○公園の木道脇の湿地にタコノアシが花を咲かせています。垂直に伸びた赤みがかった茎は上部が放射状に広がり、そこに5oぐらいの淡黄色の小さな花をタコの吸盤のようにびっしり付けています。長さ5pぐらいで放射状に枝分かれして広がる花序は、タコを逆さまにしたときの足の様で、植物の名前もタコノアシ。河川改修やため池の埋め立てなどで減少が著しい植物で、環境省の「RDB」で絶滅危惧U類に指定されている貴重な植物です。
○今年の異常気象のせいでしょうか。公園の中でヒガンバナやヤマジノホトトギスが一部の場所で咲き出しています。

【2003年8月26日(火)】
○気温・湿度が共に高いじめじめしてた昼下がり、センター下の園路沿いのコンクリートで出来た石垣に、体長40pぐらいのマムシがトグロを巻いていました。この時期じめじめと湿った小川沿いの草原にはいると、マムシに注意しなければ成りませんが、園路沿いに出てくることは滅多にありません。棒でそっとつついても動こうとしないので、園路の真ん中に出てくることも無いだろうということで、しばらく様子を見ることにしましたが、夕方にはどこかへ行ってしまいました。

【2003年8月24日(日)】
○秋の七草の筆頭のハギの花も高尾の森で咲いています。草冠に秋で「萩」、漢字からいっても秋草の代表がハギということでしょうか。通常ハギといえばヤマハギを指しますが、ヤマハギは草ではなく落葉性灌木ですので、秋の六草一木というのが正しいのかも知れませんが、そういう野暮なことをいうのはやめましょう。花札ではハギにはイノシシですが、文学の世界ではハギは牡鹿の花妻に見立てられています。ハギの樹勢そのものがしなやかな女性の姿態を思わせるからなのか、ハギの花の散り敷いた風情がそうさせたのか判りませんが。また、芭蕉の句にも「しら露もこぼさぬ萩のうねりかな」という名句があります。

【2003年8月23日(土)】
○午後の四時過ぎ子供公園へ向かう橋上の下の草原に、マルタンヤンマが一匹止まっていました。体長70oぐらいの成熟したオスのマルタンヤンマで、体は青色と褐色の縞模様をしており、前面の青色の複眼が大変美しく感じられました。マルタンヤンマは大型のヤンマで、平地や丘陵地のアシやガマなどの湿性植物が生い茂る池沼に生息し、昼間はそこに隠れていて早朝や夕方の薄暗い時間帯に活発に飛翔します。フランスのトンボ学者マルタンの名が付いているトンボで、当公園の大変貴重な昆虫ですので採集は御遠慮下さい。

【2003年8月22日(金)】
○ようやく例年通りの夏の暑さが戻りセミたちの大合唱が再び聞かれるようになりました。2回目の「セミのぬけがら調査」も摂氏30度を越える暑さの中で実施されました。成果はニイニイゼミが101個、アブラゼミが304個、ミンミンゼミが190個、ヒグラシが74個、ツクツクボウシが99個の合計768個と沢山取れました。ニイニイゼミのぬけがらが比較的多く取れたことからも、今年の梅雨明けが遅れていたことを伺わせます。

【2003年8月21日(木)】
○公園のあちらこちらで他の樹木などに絡まりながら蔓を伸ばして、カラスウリが白い花を咲かせています。今年のカラスウリの開花は冷夏のため1週間以上遅れて今が最盛期のようです。陽がかげると共に白い蕾の先端が五つに割れ、割れた5枚の星形をした花びらの先に、白い糸を織り込こむようにして直径8pぐらいの白いレースを拡げていきます。花は1時間ぐらいで全開してしまい朝方までに萎れてしまいます。残念ながらカラスウリが美しい白いレースの花を咲かせているのは夜だけなので昼間は見られません。

【2003年8月20日(水)】
○公園の中で比較的多い野草の一つのコバギボウシが花茎を伸ばし、十数個の淡い紫色の花を横向きに開いて咲いています。花の内側には濃い紫色の筋が走っており、花は深夜から明け方にかけて開き、その日の内に下に垂れ萎れてしまう一日花です。葉っぱが他のギボウシに比べて小さく、また、橋の欄干に付ける擬宝珠に花の若い蕾が似ているので、小葉擬宝珠(コバギボウシ)と名付けられています。春の山菜として山里で売られている「うるい」は、オオバギボウシのまだ葉が開いていない若芽の部分です。

【2003年8月19日(火)】
○ミズヒキが細長くしなやかに伸びた花穂に、上から見ると砂粒みたいな小さな赤い花を咲かせています。花弁はなく四つに裂けたガク片は、上下それぞれの半分が紅白に染め分けられています。少しはなれてみるとお祝いに使う紅白の水引のように見えることから、ミズヒキと名付けられています。夭折した詩人立原道造は、人の消えた淋しい高原の風になびくミズヒキの花を見て、「山の麓のさびしい村に 水引草に風が立ち 草ひばりのうたいやまない〜」と詠っています。ミズヒキはタデ科の植物ですが、バラ科のキンミズヒキの黄色い花も公園で咲いています。

【2003年8月17日(日)】
○トンボの発生は夏のこの時期に最盛期を迎えます。公園には湿地が多いのでトンボが多く飛んでいます。この1週間で見られたトンボはナツアカネ、ウスバキトンボ、ノシメトンボ、コシアキトンボ、オオシオカラトンボ、シオカラトンボ、オニヤンマ、ギンヤンマ、ネアカヨシヤンマ、マルタンヤンマ、ヤブヤンマ、カトリヤンマ、コヤマトンボ、アジアイトトンボ、オオアオイトトンボなど15種類ですが、他にも何種類かのトンボがいると思います。「蜻蛉行くうしろ姿の大きさよ 中村草田男」

【2003年8月16日(土)】
○昔は衣食住に関係し大変重宝した植物でも、時代と共に忘れ去られた植物があります。公園の園路端などに繁殖して葉は卵形で互生し、葉裏に白い綿毛がある苧麻(チョマ)又は青苧(アオソ)といわれたカラムシも、忘れ去られた植物の一つです。公園の園路端で分枝した花穂に細かい花を付けています。茎の上方に淡緑色の雌花、下方に黄白色の雄花の穂を付けます。茎には強靱な繊維があり、以前はこの繊維で全国的にカラムシ織りが織られていましたが、その制作に手間暇がかかりすぎるので、今ではカラムシ織りを織っているのは、観光のために織っている奥会津の昭和村ぐらいになってしまいました。

【2003年8月15日(金)】
○公園の園路に赤紫色の蝶形花のクズの花が花びらを風に散らしています。クズの花は野性的な美しさをたたえていますが、なぜか古人は花の美しさに目をとめず、葉を、しかも風に翻るクズの白っぽい葉裏に注目し、そこから「裏見(恨み)」という言葉を連想し、「万葉集」以降に趣深い数々の詩歌を残しました。花が注目されだしたのは明治以降で、高浜虚子の「むずかしき禅門出れば葛の花」や釈迢空の「葛の花踏みしだかれて色あたらしこの山道を行きし人あり」の絶唱が生まれています。

【2003年8月14日(木)】
○オオスズメバチの巣がエドヒガンへ行く途中の園路脇の土中で見つかりました。危険ですので駆除してもらいましたが、巣は三層からできていて大きい巣は直径30pぐらいありました。巣の中には卵から幼虫や蛹、成虫に成りかかったものが多数いました。また、スズメバチの巣に寄生するというスズキベッコウハナアブと思われる虫も2匹巣の中から見つかりました。オオスズメバチは日本に棲むハチの仲間では最大で、毒性も強く気が荒いので公園で出会ったら注意する必要があります。

【2003年8月13日(水)】
○日当たりの良い場所で、他の草木にからみつくようにしてヘクソカズラが、長さ1pぐらいの鐘形をした小さな花を咲かせています。筒状の白い花冠の中央は紅紫色の可憐な花ですが、花や茎、葉などこの植物のどこをもんでも強烈な悪臭を放ちます。この悪臭が故に万葉の時代から「クソカズラ」と呼ばれていたのが、何時の時代からか御丁寧に「屁」まで賜って、今ではヘクソカズラと呼ばれるようになっています。

【2003年8月12日(火)】
○両生類・は虫類に続いて「ザリガニ」のミニ展示を開始しました。昔から子供たちの身近な遊び相手のザリガニですが、実は意外と知られていない一面がたくさんあります。今回は、思わず「へぇ〜」と言ってしまうような、ザリガニの隠れたエピソードを紹介すると同時に、いちばん身近な外来生物でもある「アメリカザリガニ」や、この北本自然観察公園にすむ外国から来た生き物たちを見ながら、今大きな問題になっている外来生物について、いっしょに考えて行こうと思います。

【2003年8月10日(日)】
○センター入口のふれあい橋のたもとでクサギが、独特の香りを周囲にただよわせて白い花を咲かせています。枝先に集まって咲く花は赤色がかったガクから飛び出し、4本の雄しべと1本の雌しべを花の外に長く突き出させています。名前の如く枝を折ったり葉を千切ったりすると嫌な匂いがします。花の香りに誘われてクロアゲハやカラスアゲハ、キアゲハ、オオスカシバそれにハチなどの昆虫が集まってきています。

【2003年8月9日(土)】
○台風10号が日本列島を串刺しのように縦断し、公園の樹木も激しく揺れ高尾の池の水も波打っています。今日の暴風雨を高尾の池でやり過ごしているのでしょうか。体全体が黄白色で黒褐色の縦班模様が入るヨシゴイの幼鳥が1羽、池のヨシに隠れるようにじっとしていました。ヨシゴイは日本に生息するサギの仲間では最も小さいサギで、外敵が来ると首を上の方に伸ばしじっと動かなくなり、ヨシ原の景色にとけ込むようにして外敵を防ぎます。日本へは主に夏鳥として飛来します。

【2003年8月8日(金)】
○北里の森の林床で淡い青紫色の花を付けるアキノタムラソウが咲き出しています。角張った茎の上部が分枝し唇形の花を何段にも輪生状に咲かせています。虫眼鏡で花を拡大して正面から見ると、カバが大口を開けて並んでいるように見えるといわれています。この時期、青色っぽい花はツユクサぐらいなので、薄暗い雑木林の中でアキノタムラソウが青紫色の花を咲かせていると、その場所だけ華やいで見えます。夏の暑さ真っ盛りの中で咲くのでナツノタムラソウと命名した方がいいような気もしますが、ナツノタムラソウという植物はすでにありますし、ハルノタムラソウという名の植物もあります。

【2003年8月7日(木)】
○公園の雑木林の下草の生い茂る林床の影で、花茎に粒々とした小さな淡紫色の花を穂のように付けたヤブランが咲いています。葉は細長い線形で巾1p、長さ40pぐらいの濃緑色で光沢があり、その先端が緩やかに湾曲しています。ユリ科の植物ですが、藪に生え葉がランに似ているのでヤブランと呼ばれています。麦門冬(ばくもんどう)の名で江戸時代から栽培されており、秋になると黒紫色の7oぐらいの球形の果実が熟します。

【2003年8月6日(水)】
○公園の木道脇の湿地でヘラオモダカの白い小さな花が咲いています。三角形の花茎は3本ずつの枝分かれを繰り返し高いのは1mぐらいの高さになり、その先端の小枝の先に三枚の白い花を付けています。花茎が大きい割には花は小さく1pにも満たない花の大きさです。和名はヘラ状の葉をしたオモダカという意味で、葉はすべて根もとから出ており、また、真夏には理由はわかりませんが一部の葉が枯れます。

【2003年8月5日(火)】
○「ミン、ミン、ミン」とミンミンゼミが公園の雑木林で鳴き出しました。これであとツクツクホウシが出れば公園に棲息するセミが出そろいます。今年は梅雨が長くセミの鳴き声が聞こえないで寂しく思っていましたが、人間は勝手なもので、梅雨が明けセミが鳴き出すと暑さも加わってうるさい鳴き声にうんざりもします。ミンミンゼミはアブラゼミと同じ6年間を土の中で生活するといわれ、通常夜に土の中からはい出して羽化します。薄緑の羽を持つ脱皮途中のセミは神秘的な美しさを感じさせます。「暁やうまれて蝉のうすみどり 篠田悌二郎」

【2003年8月3日(日)】
○梅雨の明けた真夏の陽が降りそそぐ公園で、ある団体の定例野鳥観察会が催されました。さすがに野鳥たちも夏眠中と思えて、観察できた野鳥は以下の20種類でした。カイツブリ、カワウ、ゴイサギ、カルガモ、コジュケイ、キジ、バン、キジバト、カッコウ、ツバメ、ヒヨドリ、ウグイス、コガラ、シジュウカラ、ホオジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス。
○公園駐車場の植込みにコガタスズメバチが巣作りをしています。来園者に知らせていただきました。知らずに巣の周辺に近づくと刺される危険があるため、注意を呼びかける看板をたてました。現在、巣の直径は15センチ程度ですが、大きいものではサッカーボール位になります。性質はおとなしいハチですからそっとしておきましょう。

【2003年8月2日(土)】
○公園の園路の至る所で、上翅にあらい縦筋が入っているオオヒラタシデムシを多数見かけます。青みがかった黒色の体で体長2pぐらいの扁平の形をした甲虫です。ミミズや他の生き物の死骸や生ゴミを餌にする森の掃除屋といったところで、小さな生き物の死骸はオオヒラタシデムシの働きで土に帰されます。この虫は今や都市の公園や空き地にも住みつくようになってきており、オオヒラタシデムシのシデムシとはおそらく「死出虫」という意味なのだろうと思います。

【2003年8月1日(金)】
○梅雨明けを間近に控えた今日の夜、ホタルやセミの羽化などの観察を目的とした「夜の自然観察オリエンテーリング」を実施しました。多数の方の参加を得て、ヘイケボタルの点滅する光やアブラゼミの羽化の模様、それに巣の入口に集まっているミツバチの集団や、夜にしか見られないカラスウリのレース模様の白い花を見ることが出来ました。「ホタルは成虫になると何を食べるの」という質問がありましたが、ホタルは成虫になると口はあるが餌はほとんど取らないで、飲むのは水(露)だけで、幼虫時代にたくわえたエネルギーで生きているといわれています。

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